タンパク質-タンパク質複合体モデルの作成
このページでは 2 個のタンパク質が登場します.
- トリプシン-ウシ膵臓塩基性トリプシン阻害剤 (BPTI) 複合体:実験的に決定された四次構造
- ビクニン (ビクニン) :一次構造.BPTI と相同なドメインを 2 個有する
分子モデリングソフト Builcule を使うと,
BPTI と ビクニン とが相同なタンパク質であることを足がかりにして,ビクニン の一次構造からトリプシン-ビクニン 複合体モデルを作成できます.
すなわち,
- トリプシン-BPTI 複合体を作成する(PDB ファイルから切り出す)
- BPTI をテンプレートとし,ビクニン のホモロジーモデルを作成
- ビクニン のホモロジーモデル と BPTI を重ね合わせる
- トリプシン-BPTI 複合体のトリプシンと ビクニン ホモロジーモデルをコピー&ペーストして,トリプシン-ビクニン 複合体モデルを作成
インフォメーション
仕様
- ホモロジーモデリングのテンプレートは,ユニット 1 で作成する仕様です
- ホモロジーモデルは,ユニット 0 に作成される仕様です
タンパク質
素材は,RCSB Protein Data Bank から入手しました.
トリプシンと BPTI との複合体 は,4BNR を使います.ビクニン は 1BIK です.
下の FASTA 形式は Builcule で作成したもので,小文字の c はシスチンを意味します.
BPTI のアミノ酸配列
>BPTI RPDFcLEPPYTGPcKARIIRYFYNAKAGLcQTFVYGGcRAKRNNFKSAEDcMRTcGGA
ビクニン のアミノ酸配列
ビクニン は,BPTI と相同なドメインが 2 個タンデムに連なった構造です.
テキストエディタで 2 本のペプチドに分割しておけば,どちらからもモデルタンパク質を構築できます.
>ビクニン N-末側ドメイン ScALGYSAGPcMGMTSRYFYxGTSMAcETFQYGGcMGNGNNFVTEKEcLQTcRTV >ビクニン C-末側ドメイン AcNLPIVRGPcRAFIQLWAFDAVKGKcVLFPYGGcQGNGNKFYSEAEcREYcGV
ユニット 1 で 4BNR を開く
そこで,ユニット 1 で 4BNR を開きました.
分子エディタには 474 個の分子が検知されました.大部分は酸素原子(水)です.
画像はメニューバーで [表示(V)]-[選択した分子を空間充填で] を実行し,分子エディタで 分子 0 と 2 を選択したところです.
この作業により,4BNR には,トリプシン-BPTI 複合体は 2 対含まれていることが判りました.
ユニット 1 で テンプレートとなる複合体を作成
画像は,分子エディタで,分子 0 と 2 を選択し,[選択を反転],次いで [分子をカット] と実行した状態です.
2 分子からなる複合体を単離できました.
画像下側の分子がトリプシン,上が BPTI です(酵素と阻害剤との複合体を形成しています).
分子の番号はそれぞれ 0,1 が与えられています.
以下では,この構造の BPTI をテンプレートとして,ビクニンの一次構造をホモロジーモデリングします.
アラインメント
メインウィンドウのメニューバーで [実験(X)]-[ホモロジーモデリング] を実行すると,画像に示すウィンドウが表示されます.
これをアラインメントウィンドウと称します.
使用法はホモロジーモデリングに記しています.
アラインメントウィンドウで,例えば下のように条件を設定して,
- FASTA ファイルには,2 個のペプチドを記しているので,目的とする配列を選択
- ユニット1 からは,テンプレートとする BPTI == 分子番号1 を選択
- アミノ酸置換行列やギャップは適宜設定してください
- ウィンドウは,連続する数アミノ酸をひと塊にしてスコアリングするための設定です
アラインメントウィンドウのメニューバーで[計算(C)]-[アラインメント] と実行すると,ローカルアラインメントが作成,表示されます.
ホモロジーモデルの作成
アラインメントウィンドウのメニューバーから [計算(C)]-[ホモロジーモデリング] とすると,図に示すウィンドウが現れます.
このウィンドウは,テンプレートと,ターゲットから構築されたモデルを重ね書きしているウィンドウです.
どの部分がモデリングされたか立体構造で確認できるように作成しました.
青色がテンプレート,赤色がモデルです.
これと同時に,ホモロジーモデルがユニット 0 に作成されます.
ユニット 0 に作成されたホモロジーモデル
画像はユニット0 を示します.すなわち,作成された ビクニン モデルです.
下に記す一次構造から BPTI をテンプレートとする三次構造モデルが作成できました.
ユニット 0 のアミノ酸エディタでは,テンプレートと一致しないアミノ酸が反転表示しています.
>ビクニン N-末側ドメイン ScALGYSAGPcMGMTSRYFYxGTSMAcETFQYGGcMGNGNNFVTEKEcLQTcRTV
まだ続きがあるので,ユニット 0 および ユニット 1 では分子を動かさないでください.
ユニット 2 で複合体モデルを作成
画像は作成されたトリプシン-ビクニン 複合体モデルです.
ビクニンを空間充填様式で,トリプシンを針金様式で表示しています.
以下に作成手順を記します.
もしユニット 0 または ユニット 1 では分子を動かしてしまった場合
下記いずれかの方法で位置を調整してください.
- 水平ツールバーの[配列で重合せ] で,アラインメントを作成して重ね合わせ
- ユニット 0 をクリアして,再度ホモロジーモデリング
マージ
ホモロジーモデリングを実行した段階で,テンプレートとモデルとは重ね合わされた状態と言えます.
したがって分子を交換したモデルが構築できます.
ユニット 2 に,ホモロジーモデルとトリプシンとの複合体モデルを作成します.
ユニット 0 にはホモロジーモデルが 1 個のみ存在します.
ユニット 0 からホモロジーモデルをユニット 2 にコピーします.
- 分子エディタで 0 番をクリックして反転表示
- 分子エディタで [分子をコピー]
- ユニットセレクタでユニット 2 に移動
- 分子エディタで [分子をペースト]
ユニット 1 にはトリプシンと BPTI の 2 分子が存在します.
トリプシンをユニット 2 にコピーします.
- 分子エディタでトリプシンの番号 0 をクリックして反転表示
- 分子エディタで [分子をコピー]
- ユニットセレクタでユニット 2 に移動
- 分子エディタで [分子をペースト]