タンパク質-低分子複合体の低分子を改変
Builcule で,酵素-低分子複合体の分子モデルを作成する方法を紹介します.
素材は,RCSB Protein Data Bank から入手した 1A3W です.
これは,フラクトース-1,6-二リン酸が結合したピルビン酸キナーせです.
手順の紹介が目的であり,分子の選択や改変に意味はありません.
X-線結晶回折法で決定された構造なので,キナーゼにも FBP にも水素が含まれていません.
ここでは,FBP に水素を付加して「ちゃんとした分子」に改変します.
仕様
分子の重ね合わせについては,下記の仕様です.
- ユニット 0 と ユニット 1 の分子を重ね合わせます
- ユニット 0 の分子が平行移動と回転して分子が重ね合わされます
重ね合わせ後,ユニット 0 と ユニット 1 から必要な分子をユニット 2 にコピー & ペーストすればキメラを作成できます.
FBP を見つける
分子エディタには,分子ごとにその原子数も表示されます.
FBP は原子数からあたりを付けられそうです(原子が欠落している場合があるので,あくまでも目安).
画像は,
- ユニット 1 で 1A3W を開き
- メニューバーの [表示と選択(V)]-[選択した分子を空間充填で] を実行し
- 分子エディタで 6,7 番をクリックして反転表示
させたところです.
この 2 分子が FBP のようです.
FBP 複合体を単離
ここでは,キナーゼ FBP 複合体をコピーしてユニット 1 にペーストします.
(一組の複合体を残して他は削除するという手もあります)
- 上と同じ方法で FBP に結合しているキナーゼサブユニットを見つけ,一組のサブユニットと FBP を反転表示させた状態にします
- 分子エディタの [選択を反転] を実行
- 分子エディタの [分子をカット] を実行
とすれば,一組のサブユニットと FBP の複合体が単離できます.
そのままでは分子が区別しにくいので,
- メニューバーの [表示と選択(V)]-[選択した分子を空間充填で] を実行し
- 分子エディタで FBP をクリックして反転表示
としました.
FBP が空間充填様式で,キナーゼが針金様式で表示されています.FBP を含む複合体が単離できたことが確認できました.
FBP のコピーを作成する
- 分子ディタで FBP を反転表示させた状態で,分子エディタの [分子をコピー]
- ユニット 0 に移動して,分子エディタの [分子をペースト]
- 水平ツールバーの[センタリング]
としました.
ユニット 0 に FBP が単離できました.
FBP を編集する
ここでは,水素付加をおこないます.
垂直ツールバーの[水素付加を] クリックすると,水素付加のオプション選択ウィンドウが表示されます.
極性水素付加(OpenBabel) と非極性水素付加(OpenBabel) を 1 回ずつ実行したのが画像です.
他の編集機能を使って FBP アナログを作成するのも面白そうですが,ここまでにしておきます.
重ね合わせるべき原子をピック
ユニット 0 と 1 で,重ね合わせるべき原子をピック(原子をクリック)します.
ここでは,フラクトースの炭素原子をピックしました.
画像は ,ユニット 1 の FPD 部分をズームアップし,炭素原子のピック順を書き込んだところです.
ユニット 0 の FBP についても対応する炭素原子をピックします.
なお,ズームは,Ctrl キーと X キーを同時に押しながらマウススクロールです.
重ね合わせて表示
ユニット 0 と 1 で対応した原子をピックした状態で,水平ツールバーの[ピックで重合せ] をクリックすると,ユニット 0 が平行移動,回転して重ね合わせが実行されます.
その際,画像に示す,重ね合わせのようすを示すウィンドウが表示されます.
ユニット 0 が赤色の針金モデル,ユニット 1 が青色の針金モデルで描かれています.
分子をマージ
ユニット 0 とユニット 1 が重ね合わされた状態なので,ユニット 2 に FBP 誘導体(水素付加しただけ)とキナーゼとの複合体モデルが作成できます.
ユニット 0 には FBP 誘導体が 1 個のみ存在します.
ユニット 0 から FBP 誘導体をユニット 2 にコピーします.
- 分子エディタで 0 番をクリックして反転表示
- 分子エディタで [分子をコピー]
- ユニットセレクタでユニット 2 に移動
- 分子エディタで [分子をペースト]
ユニット 1 にはキナーゼと FBP の 2 分子が存在します.
キナーゼをユニット 2 にコピーします.
- 分子エディタでキナーゼの番号 0 をクリックして反転表示
- 分子エディタで [分子をコピー]
- ユニットセレクタでユニット 2 に移動
- 分子エディタで [分子をペースト]
画像は,FBP 誘導体とキナーゼとの複合体モデルです.
上記「FBP 複合体を単離」の画像と比べると,FBP に水素が付加されていることが判ります.