近傍の検知
Detrial ではコンタクト領域の分析を目的として,「近傍の検知」機能をいくつか実装しています.
原子,またはアミノ酸,または分子を指定して,その一定距離以内にあるアミノ酸を選択する「近傍アミノ酸の検知」機能と,
2 分子を指定して,それらのあいだで一定距離以内にある原子を検知する「2 分子間の近傍原子の検知」機能です.
考え方
プログラムを作成する際のヒントになることを期して,技術的な要素を書いてみます.
- 元素と座標を記したファイルを読む必要があります
- 距離の測定:公式に代入しても良いのですが,Detrial では,Eigen の norm() 関数を使っています
- 系の階層構造:分子 ∋ ペプチド ∋ アミノ酸 ∋ 原子といった構造を検知しておくと,「特定の原子近傍の分子」といった検知が楽におこなえます
- インデックス:原子 → 分子,原子 → アミノ酸,分子 → 原子,アミノ酸 → 原子といったインデックスを作っておくと,処理が楽におこなえます
近傍アミノ酸の検知
メニューコマンド
基準となる対象別に,メニューコマンドを 3 個作成しました.
- [検知(D)]-[ピックした原子の近傍アミノ酸を選択]
- [検知(D)]-[選択した分子の近傍アミノ酸を選択]
- [検知(D)]-[選択したアミノ酸の近傍アミノ酸を選択]
1 では,あらかじめ基準とする原子をピックしておいてください.
2 では,あらかじめセレクタで分子を選択しておいてください.
3 では,あらかじめセレクタでアミノ酸を選択しておいてください.
ピックやセレクタでの選択法は,Detrial のトップページ 分子表示ソフト Detrial に記しています.
距離を指定してアミノ酸を選択
メニューコマンドを実行すると距離の入力を促すウィンドウが表示されます.
てきとうな値を入力して [実行] ボタンをクリックすると,セレクタ上でアミノ酸が選択されます.
検知された近傍アミノ酸の描き分け
[近傍アミノ酸の検知] では,セレクタ上でアミノ酸が選択されるだけなので,必要に応じて [描き分け] 機能等を使って表示を調整します.
画像はその動作確認例で,酵素-基質複合体において,酵素近傍のアミノ酸を検知したところです.
下に手順の概略を示します.
- レイヤ 0 でタンパク質(ここでは酵素基質複合体)を開く
- 描き分け機能を使い,アミノ酸を「リボン & 二次構造」で,非アミノ酸を「空間充填 & CPK」で描く
- レイヤ 1 で同じタンパク質を開く
- セレクタで基質分子を選択する
- [選択した分子の近傍アミノ酸を選択] 機能を使い,近傍アミノ酸を検知する
- 描き分け機能を使い,選択アミノ酸を「空間充填 & アミノ酸」で,その他の部分を「リボン & 二次構造」で描く
- レイヤ 0 と 1 の両方を表示
左側のウィジェットでは基質分子を,右側のウィジェットでは基質を取り囲むアミノ酸を強調表示することができました.
2 分子間の近傍原子の検知
セレクタ上で 2 分子を選択しておき,距離を指定すると,距離未満に存在する原子を検知する機能です.
メニューコマンドを,色分け別に 2 個作成しました.
- [検知(D)]-[選択した 2 分子間の近傍原子を検知]-[分子別に色分け]
- [検知(D)]-[選択した 2 分子間の近傍原子を検知]-[電荷を計算して着色]
距離を指定して実行
左が [分子別に色分け],右が [電荷を計算して着色] したものです. 左右で,同じタンパク質-タンパク質複合体を処理しています.