化学進化について考えてみる
低分子から糖・有機酸代謝,翻訳・転写複製系が発生するためにはどのような過程を経なければならないか考えてみた.
ポリリン酸が重要な役割を演じるので,「リン酸仮説」と名付けた.
- リン酸,リボース,アミノ酸,脂肪酸,塩基前駆体などをビルディングブロックとする
- ビルディングブロックが高分子化するにはポリリン酸が使われた
- ビルディングブロックは重合してヌクレオチド様化合物を形成し,やがて,核酸,タンパク質,リン脂質,補酵素などに収束した
- ビルディングブロックの減少を補うための化学反応が進化し,中間代謝となった
これは,手持ちの材料でなにかできないか考えて作成した,勉強のための作業仮説である.
地球上の生命の起源については未解決の課題であろう,アストロバイオロジーもこれからの領域であろう,ということで作成した.
[分子モデリングに係る基礎研究] では,この作業仮説に基づいた研究もしている.
初出は 2012 年 5 月 28 日で,骨子は変わっていない.「答え合わせ」が楽しみである.
リン酸化説のイメージ化合物
画像はリン酸化説のイメージ化合物である.
リボースの 3' と 5' がリン酸化されている.
2' にはアラニンが結合している.
塩基のように見える部分はオロト酸である.
1.現在の材料で過去を想像する
生命の起源 = 化学進化をモデル化するために,現代の生物の主要構成成分とそれらを縮合した物資を整理した.
生命に重要な役割を果たしている低分子は,ヌクレオチド関連化合物や糖リン酸エステルと言えそうである.
これらのモノマーをビルディングブロック脱水重合物をコンポーネントと称する.
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2.コンポーネントからプロトセルの形成
化学進化初期のコンポーネントについて考えてみる.
コンポーネントを便宜上,コンポーネントをプロトリン脂質とプロトポリマーに分類する.
プロトポリマーは,タンパク質や核酸の遠い先祖である.
プロトリン脂質ミセルから細胞様の構造が生成したと考え,これをプロトセルと称する.
プロトセル内の疎水的な環境が微酸性であれば,加リン酸分解や脱水縮合反応等の反応が進行し,コンポーネントが成長する.
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3.プロトポリマーの成長
プロトポリマーを成長させる反応をリストアップし,生化学的に重要な反応を見つける.
これらの反応は,現代のヌクレオチド関連化合物の合成や複製・転写・翻訳反応につながる.
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4.酵素活性の起源
リン酸仮説に基づいた酵素活性の起源を考える.
酵素の起源を研究する方向を 2 個想定する.
- ビルディングブロックから始めて酵素活性を有するペプチドに至る
- 現代の酵素を分析して発生したころの状況を推定する
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5.ペプチド,ヌクレオチドの伸長
これらはヌクレオチド部分の 3'-末(の 3'-OH)上での反応である.
- ヌクレオチドを結合する反応(後の核酸伸長反応)
- ペプチジル基間のアミノリシス(後のペプチド伸長反応)
- アミノ酸を結合する反応(後のアミノアシル tRNA の生成)
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6.ヌクレオチドの起源
塩基類は N-グリコシド結合を形成しにくいが,現実にヌクレオチドは存在する.
これを説明するために,化学進化の場におけるヌクレオチドの形成は,アミノ化合物と活性化された糖との反応で始まったと考えてみる.
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7.糖・有機酸代謝の発生
高エネルギーリン酸化合物産生システムの発生,言い換えれば,現代の解糖系やペントースリン酸サイクルの起源を論じる.
システムが完成するまでのどこかの段階で,NAD や FAD の利用が始まると考える.
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8.時系列展開による要約
リン酸仮説のまとめとして,考察を発展させつつ時系列展開してみる.糖,アミノ酸,核酸塩基,およびポリリン酸から始めて,翻訳系や糖・有機酸代謝が発生するまでの期間を扱う.
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